2021年8月に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表した第6次評価報告書(第1作業部会)は、「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことは疑う余地がない」、「人為的な地球温暖化を特定のレベルに制限するには、二酸化炭素(CO2)の累積排出量を制限し、少なくとも二酸化炭素の正味排出量ゼロを達成することが必要である」と記しています。また、パリ協定はすべての締約国に対し炭素排出量削減への取り組みとして国別約束を作成し、その約束を着実に達成することを求めています。こうした中、衛星による大気中の温室効果ガスの観測は、パリ協定の批准国が提出する排出量報告書の透明性の向上に寄与するものと期待されています。
温室効果ガス・水循環観測技術衛星(Global Observing SATellite for Greenhouse gases and Water cycle: GOSAT-GW)は、日本の地球観測衛星です。宇宙から二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスを観測する一連の衛星であるGOSATシリーズの3番目の衛星で、2009年に打ち上げられた温室効果ガス観測技術衛星(Greenhouse gases Observing SATellite: GOSAT,「いぶき」)と2018年に打ち上げられた2号機(GOSAT-2,「いぶき2号」)の後継機です。
GOSAT-GWは、二つのミッション機器、すなわち高性能マイクロ波放射計3(Advanced Microwave Scanning Radiometer 3: AMSR3)および温室効果ガス観測センサ3型(Total Anthropogenic and Natural emissions mapping SpectrOmeter-3: TANSO-3)を搭載しています。TANSO-3とその地上システムの開発は、環境省と国立環境研究所(NIES)が共同で行っており、宇宙航空研究開発機構(JAXA)も環境省との契約に基づきTANSO-3の開発と運用に携わっています。
TANSO-3は以下のミッションを担います。
GOSAT-GWは上記ミッションの達成を通して、GOSATおよびGOSAT-2とともに、地球大気中の温室効果ガス濃度の上昇がもたらす気候変動の緩和に貢献します。
国立環境研究所は、GOSAT-GWプロジェクトにおいてTANSO-3による温室効果ガス観測ミッションを担当し、主に以下の業務を行っています。
国立環境研究所GOSAT-GWプロジェクトは2021年度に当所の衛星観測センター内に設置されました。また衛星観測センターのすべてのチームとグループは、国立環境研究所が担う上記責務を果たすことができるよう柔軟に協力していきます。
GOSAT-GWプロジェクトは、日本の文部科学省と環境省が、その傘下の研究開発機関とともに推進するプロジェクトです。ミッション機器の高性能マイクロ波放射計3(AMSR3)は文部科学省とJAXAが担当し、温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3)は環境省と国立環境研究所が担当しています。さらに、国立環境研究所、海洋研究開発機構(JAMSTEC)および情報通信研究機構(NICT)は、アルゴリズム開発、検証およびTANSO-3による二酸化窒素の観測に関する科学研究の促進を目的に共同研究契約を締結しました。
また、環境省と国立環境研究所は、組織間の連携協定、サイエンスチームおよび研究公募を通じた国内外の科学者の参加についても協議しています。
環境省:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gosat.html
宇宙航空研究開発機構:https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/project/gosat-gw/index.html
海洋研究開発機構:https://www.jamstec.go.jp/ess/j/
情報通信研究機構:https://www2.nict.go.jp/ttrc/thz-sensing/ja/